#05
成功するブランドには伝えるべき「物語」がある。

2014年7月

価値のある物語はメディアが勝手に報道してくれる。

ある雑誌で約7年に亘り「ブランドの横顔」というタイトルで、毎号異なる高級ブランドを取材・執筆させていただいていました。連載のスタートは海外ブランドが続々と日本のマーケットに上陸し始めていた2000年初頭、毎月の取材は競合ひしめくマーケットにあってとりわけ輝きを放っていたブランドの内側を垣間見られる楽しみな時間でした。
ファッション誌にありがちな総論的なブランド紹介ではなく、各ブランドの知られざる意外な素顔を紹介することをコンセプトに、重複するブランドもあったため、7年間で紹介したブランドは40ほどでしたが、その貴重な経験は、成功するブランドにはある共通の属性があることを教えてくれました。
その属性とは簡潔に表現すれば「そのブランドにしか語れない物語がある」ということ、さらに言えば「その物語を軸に一貫したコミュニケーションを展開している」ことです。なんだ、そんなこと当たり前じゃないか、と言われるかもしれませんが、取材を通して多くのブランドが自らの物語の価値に気がついていないことを実感しました。気がついていなければ、それを伝えようとはしないし、伝わりません。逆に物語の価値を自己評価できるブランドは他のブランドには真似のできないメッセージの発信が可能となります。希少なメッセージには人は目を留め、やがて強い共感の輪が生まれることとなります。
その証左となる代表的な例としては、登山やサーフィンなどのスポーツギアやファッションのブランドとして知られる「パタゴニア」を挙げるべきでしょう。実は残念なことにこのブランドを取材する機会は得られなかったのですが、創業者イヴォン・シュイナードが著名なナチュラリストたちとともに編み上げてきた物語が、環境意識の高い若者たちに支持されながら、創業から40年を経た今もページを重ねていることは注目に値します。パタゴニアはほとんど広告を発信していませんが、それは彼らが自らの物語の価値をよく知っているからに違いありません。価値のある物語はメディアが勝手に報道してくれるから広告は不要なのです。

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