#06
CSVの実現。言うは易く行うは難し。

2020年7月

一時的なブームで終わりそうにない、企業の社会貢献活動の新しいカタチ

最近、CSVという言葉をよく耳にするようになりました。ハーバード大学のマイケル・ポーター先生によりこの考え方が提唱されたのは2006年、私が何かのサイトでこの言葉を見つけたのは、確か10年ほど前のことでした。「CSR」という言葉が社会に浸透し、日本のどの企業も社会貢献活動を意識し始めた頃だったと記憶しています。
バブル時代に流行った「メセナ」やその後の「フィランソロピー」に続き、「CSR」もどうせ企業の社会貢献活動を促すキーワードとして一時的なブームに終わるに違いない・・・そう思っていたら、2015年に国連の環境サミットで「SDGs」という言葉が提唱されるや、「CSR」は企業にとって「時流だから、やらなければ仕方がないよね」といった軽い姿勢ではすまされないものとなった感があります。
そんな中で、今、定着しつつある考え方が「CSV」だと言っていいでしょう。おさらいしておくと、「CSV」とは「Creating Shared Value」の略で、一般に「共有価値の創造」と訳されます。これではちょっとわかりにくいので、噛み砕いて言うと「企業が社会課題の解決につながるような活動を通じて、その企業価値を高めていくこと」、あるいは「社会貢献活動と経済活動の両立を図りながら、企業価値を高めていくこと」を意味します(と、僕は理解しています)。

CSVを実現するための課題とその克服のヒント

しかし、このCSV、言うは易く行うは難し、です。
経済活動がそのまま社会貢献につながる企業はいいでしょう。例えば、このコラムの#02で紹介した鉄鋼スラグ。新日本製鉄(現・日本製鉄)をはじめとする鉄鋼各社が、製鉄の過程で必ず生成される鉄鋼スラグをCO2削減に有効な環境資材に変えました。
でも全ての企業が、そういうわけにはいきません。ファッションブランドやジュエリーブランドなどはどうしたらいいでしょう。こうした企業がCSVを実現するためには、2つの克服すべき課題があると考えます。一つは、その企業がなぜその社会貢献活動を行うに至ったのか・・・つまりその活動の必然性を明確に説明できること。もう一つは、その価値をどのように広く伝えていくことができるのか・・・ということです。
とくに難しいのは後者です。企業の社会貢献活動をペイドパブリシティとしてではなく、純粋に報道してくれるメディアはまずないでしょう。素晴らしい活動なら新聞やテレビでニュースとして報道してくれたらいいのにと思いますが、どのメディアもよほどイノベーティブな内容でなければ、そんなことはしてくれません。せっかくの活動も広く社会に認められなければ、企業価値の向上につながるはずもありません。
では、どうしたらいいのか・・・解決のヒントは、コラム#05で紹介したシャネルやオメガの活動例にみて取れるはずです。なぜシャネルは「芸術支援活動」を、なぜオメガは「海洋環境保護活動」を行なったのか・・・。若手芸術家を支援する目的で開催されるシャネルの定例コンサートに行くと、ホールはシャネルの洋服を身に纏った女性たちで溢れていて、一人ひとりがココ・シャネルの遺志を受け継いでいるとの自負のもと、誇らしげに演奏に耳を傾けているように見えます。
シャネルが日本でもこうしたコンサートを続けていることは、これまで様々なメディアで報道されてきました。会場の光景や空気感、人々の表情など、このコンサートを構成する様々なファクターがジャーナリストの心を動かすのです。加えて、この活動を通じてシャネルは幅広い年齢層の顧客の囲い込みにも成功していると思われます。
さて、コラムと称するには長くなりました。オメガの海洋環境保護活動のCSVとしての意義について関心のある方は、どうぞ弊社までご連絡ください。

Niblick co., ltd.