#04
アンソロジーを編纂するように、ブランドの物語を編む。

2014年7月

コミュニケーションは「編集方針」が明解でなければならない。

ブランドとは多くの物語から成るアンソロジー(選集)のようなものといってもいいでしょう。すばらしいブランドには多くの物語があり、一つひとつの物語は、商品にまつわるものもあれば、歴史的なエピソードや著名な顧客に由来するものもあります。そうした一見ばらばらに見えるたくさんの物語が有機的に連なり、重なり合い、いつのまにか一冊のアンソロジーとなって、ブランドはブランドとしての固有の輝きを放つようになります。
優れたアンソロジーは優れた編集方針の賜物ですが、昨今のブランドにはこれまでの編集方針を無視し、単に華やかなイメージだけを求めて、脈絡なく新たな物語を紡ごうとする傾向がみてとれます。その結果、迷走し、顧客が離れていってしまったブランドも少なくありません。
新たな物語をどのように紡いでいくのか……ブランドをさらに進化させていくには、この課題と真剣に向き合わなければなりません。その際に問われるのが編集方針です。編集方針とは、つまりはコミュニケーション活動のテーマのことですが、実際にブランドの未来に有効と思われる編集方針を明文化することは容易なことではありません。そのためにはまず過去の様々な物語と現代の顧客が求めているもの、ブランドが目指すこれからの方向性などとの接点を深く掘り下げる必要があります。

「海洋環境」を「編集方針」に成功したと時計ブランド

時計ブランドのオメガはかつて「海洋環境」をテーマに新たな物語を紡ぎ、ブランドの進化を促しました。きっかけは伝説のダイバー、ジャック・マイヨールとの交流にありました。ファッション・ブランドのシャネルは「CHANEL Pygmalion Days」と題し、才能ある若い音楽家たちを支援するべく定例のコンサートを開催しています。それは創業者ココ・シャネルの遺志を継ぐ活動にほかなりません。
両者に共通しているのは、なぜブランドがそれを行うのかが明解だということ……強い必然性があるからこそ、それぞれの活動は説得力をもち、語り継がれる物語となってアンソロジーにさらなる輝きを与えることとなります。例えば時流に乗ろうとしただけの「にわか環境活動」では消費者の心を動かすことはできません。おそらくその活動は一時的なものに終わってしまい、物語もそこでおしまい。中途半端なことを始めたばかりに、先達が編み上げてきたアンソロジーも編纂の整合性を失い、最悪の場合、そのままブランドの輝きが失われてしまうことにもなりかねません。

Niblick co., ltd.